経済の各部門
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天然資源
クロアチアの鉱物資源は多くはない。石炭やその他の鉱山(ボーキサイト)は1970年代と1980年代に閉鎖された。建設の原料として使用される非金属鉱物の資源が多い(砂利、砂、泥灰土、建築用石材)。クロアチアには石油やガスを含む独自の自然エネルギー資源があり、そのほとんどが風力、水力、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー源である。また、海から海水をくみ上げ大量の塩を生産している(パグ、ストン、ニンの塩田)。
農業と漁業
クロアチアには150万ヘクタールの利用可能な農地があり、そのうち約90万ヘクタールが耕地と畑であり、その他は野菜畑、果樹園、オリーブ園、葡萄畑、牧草地に相当する。気候、地勢、土壌の違いの恩恵により、普通作物と工芸作物から内陸や地中海の果物や野菜まで、幅広い農産物を生産できる。耕作は穀物、油糧作物と砂糖の国内需要を満たし、工芸作物の需要の大部分もカバーしている。クロアチアはワイン生産国であり、内陸と地中海葡萄の種類の両方が栽培されており、在来品種も有する。葡萄畑は20,000ヘクタールに伸びており、2023年には612,000ヘクトリットルのワインが生産された(2022年には725,000ヘクトリットルであった)。



オリーブ園は約21,000ヘクタールに及び、2023年には39,000ヘクトリットルのオリーブオイルが生産された(2022年には55,000ヘクトリットルであった)。イストリアのオリーブオイルは、世界的にも最高品質で、最も多い賞を受けたオイルの一つである。
畜産業は伝統的に重要な地位を占め、牛、豚、家禽と羊の飼育が普及している。スラヴォニアのクーレン、ダルマチアとイストリアのプロシュット、そしてパグ島のチーズが世界的に有名で、その地理的特産品として保護されている。
漁業と魚類加工業は、主に沿岸部や島嶼部で行われている。2023年には海水魚80,000トンと淡水魚2,300トンが漁獲された。海産物では青魚(ニシイワシ、アンチョビ)が主流で、淡水魚では最も大量に漁獲されているのは鯉、コクレンとマスである。
50以上のクロアチアの食品や農産物は、原産地呼称保護、地理的表示保護、伝統的特産品保護の表示指定によってEUレベルで保護されており、その中にはスラヴォニアのクーレン、ダルマチアとイストリアのプロシュット、ダルマチアのパンツェッタ、パグ島のチーズ、パグ島の塩、リカとダルマチアの子羊肉、ブラチ島、クルク島とコルチュラ島のオリーブオイル、ザゴリェのムリンツィ、ポリィツァのソパルニックとネレトヴァのマンダリンオレンジが含まれる。
工業、エネルギー部門と建設
クロアチアの工業生産は国の総生産において重要な位置を占めている。移行の過程で閉鎖された企業や、戦争で損害を受け、世界の生産動向にある程度しか適応できなかった企業もある。それは主に繊維、皮革、金属と木材工業やいくつかの大きな造船所に当てはまる。現代最も際立っているのは製造業と電気、ガス、蒸気及び空調供給業であり、建設・エネルギー部門における生産も重要である。2023年の工業製品の売上高は278億ユーロで、そのうち111億ユーロが輸出であった。最大の輸出は食品、金属製品、電気機器、非金属鉱産物、医薬品と製剤、木材・木材製品、コークスと精製した石油製品、機械と装置、ゴム・プラスチック製品、紙と紙製品、化学物質と化学製品、金属、家具、コンピューターとコンピューター装置、自動車とその他の輸送用機械である。
輸出では製造業が最も大きく、全体の81%を占める。2021年の最大の輸出は、機械と輸送機器(22%)、食品(9.5%)、電気機器(8%)、金属製品(8%)、化学製品(6.9%)、医薬品(6.6%)、コークスと石油製品(5%)、木材・木材製品(5.9%)、金属(5.2%)、衣料品(4.6%)、ゴム・プラスチック製品(4%)、鉱産品(3.9%)、コンピュータとコンピュータ装置(3.7%)、皮革(2.8%)、紙(2.3%)、家具(1.8%)、繊維製品(1.2%)、飲料(1.1%)、そしてタバコ(1.0%)であった。
エネルギー部門は主に電気、ガスと石油に基づく。半分以上は水力発電所で、残りは火力発電所などで発電される。一部は時折輸出される。スラヴォニア、ポサヴィナ(モスラヴィナ)とポドラヴィナ地域の油田は国内需要の約4分の1を満たし、天然ガスの生産はそのほぼ半分を満たす。
建設業(特に住宅と商業建設、そして交通インフラ建設の分野)が最も成長の著しい産業の一つである。
サービス、貿易と交通
クロアチアの道路網は26,000 km以上の種別化された道路から構成されており、そのうち1,488 km が高速道路である。国土の広さと人口の割合を考えると、クロアチアは高速道路の長さの面では南東ヨーロッパで最も発達している国である。ザグレブからカルロヴァツまでの最初の高速道路の開通は早く1972年であり、高速道路網は1990年代末から2000年代初頭にかけて大幅に拡張された。欧州自動車道路というヨーロッパの国際道路網はクロアチアの道路2,264 kmを含む。ほとんどの旅客・貨物輸送は道路を通して行われる。
鉄道路線の全長は2,617 kmであり、その内276 kmが複線である(1,013 kmが電化されている)。最も重要な鉄道の要衝はザグレブとヴィンコヴツィである。




クロアチアの造船には長い伝統がある。1960年代と1970年代には、スプリト、リエカとプーラにある大手造船所はその輸出された造船竣工量の総トン数で世界でも有数の造船所であった。最近では、海洋観光や沿岸航行のための船を建造しているアドリア海の小さな造船所(例えば、ムルテル島のベティーナ、コルチュラ島のヴェラ・ルカ、ソリン、カシュテル・スチュラツ、ラブ、シベニク)や内陸の造船所(チャコヴェツ、ザグレブなど) が、比較的良い業績を残している。
クロアチアの沿岸沿いには約350の港や船着き場があり、プーラ、リエカ、ザダル、シベニク、スプリト、プロチェとドゥブロヴニクの港が国際貿易に関わっている。戦略的な位置と港湾交通の点で、リエカ港は際立っている。島を海岸と結んでいるのはフェリーや連絡船の航路であり、クロアチアとイタリアの沿岸も部分的に結ぶ便もある。内陸水路で最も重要な港はドナウ川のヴコヴァルである。
国際線に含まれる空港はザグレブ、プーラ、ザダル、スプリト、ドゥブロヴニク、オシエク、ブラチ島、クルク島(リエカ空港)、そしてマリ・ロシニ島にある空港である。
石油輸送のため、長さ631 kmのクルク島のオミシャリュの石油ターミナルをリエカとシサクにある(2022年まで原油を精製していた)国内の製油所と結び、近隣諸国への支線もあるアドリア海石油ライン(JANAF)のシステムが建設された。



電気通信網は完全にデジタル化されており、南東ヨーロッパで最も近代的である。電気通信市場は自由化され、固定電話と携帯電話の複数の事業者が存在している。全世帯の90%がインターネットにアクセスしている。
対外貿易では、クロアチアの輸入と輸出の両方の持続的な上昇が見られているが、輸出よりも多くの製品を輸入しており、輸出による輸入のカバー率の変動がみられる。2023年の輸出額は230億ユーロに達し、輸入額はほぼ400億ユーロであった(輸出による輸入のカバー率が58%であった)。クロアチアの最も重要な貿易相手はドイツ、イタリア、スロベニア、ハンガリー、そしてE Uの外はボスニア・ヘルツェゴヴィナ、アメリカ合衆国とセルビアである。
サービス産業の最大の割合を占めているのは観光業とその関連サービスである。この分野で最も多い取引額を占めているのは中小企業であるが、大企業には以前と同様に最も多くの従業員が雇用されている。
欧州基金
欧州連合に加盟したことで、クロアチアは欧州構造投資基金の利用が可能になり、それが持続可能な経済発展と継続的な社会開発に大きく貢献した。2014年から2020年までの期間に、欧州地域開発基金、欧州結束基金、欧州社会基金、欧州農村開発農業基金、そして欧州海事水産基金を通じて見積もられた107億ユーロのうち、クロアチアは2021年4月まで125.1億ユーロ(117%)を保障する契約に署名した。


2021年から2027年までの会計期間におけるEU 資金の最適で効率的な配分の根拠となるのは、2030年までのクロアチア共和国国家開発戦略(NRS 2030)と、第2レベル地域統計分類単位(NUTS 2)である。NRS 2030戦略では、今後の10年間に関して4つの開発指針が提示され(持続可能な経済と社会、危機に対する耐性の強化、グリーンとデジタルへの移行、そしてバランスの取れた地域開発)、NUTS 2によるクロアチアの新しい区分(パンノニア・クロアチア、アドリア海・クロアチア、ザグレブ市、クロアチア北部)はクロアチアの地方の実際の開発ニーズを反映し、その均等な開発を可能にしている。
新型コロナウイルスのパンデミックの影響から回復するための「ネクストジェネレーションEU」というプログラムと合わせて1 兆8500億ユーロである2021年–2027年の欧州連合の長期予算から、クロアチアは242億ユーロを確保し、そのうち96億ユーロ(補助金63億ユーロ、有利なローン36億ユーロ)が経済回復と強靱性に割り当てられる。多年度財政枠の予算配分から、クロアチアには結束政策の実施のために96億ユーロと、共通農業政策のために47億ユーロが割り当てられている。2021年–2026年の国家復興・強靱性計画において、欧州復興・強靱性メカニズムからの資金の前提条件として、クロアチアは配分された財政支援を行政と司法制度、医療制度、労働市場と社会福祉の改革と投資のサポートに割り当てる。また、競争力、グリーン移行、交通インフラ、農業、観光、計画されている震災復興とエネルギー効率の向上への投資も実現される予定である。その10年間で、EUの資金は、デジタル化の加速、環境にやさしい移行、そして新技術の採用を通じた急速な経済発展と強化の原動力となる。